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日外会誌. 91(10): 1534-1547, 1990


原著

術後侵襲期におけるエネルギー・蛋白質代謝および生体防御修復能に関する実験的ならびに臨床的研究
―分岐鎖アミノ酸投与の意義―

札幌医科大学 外科学第1講座(指導:早坂滉教授)

島津 雄一

(1989年10月14日受付)

I.内容要旨
ラットを用いた手術侵襲モデルにより肝臓における分岐鎖アミノ酸(BCAA)のエネルギー・蛋白質代謝に与える影響を検索した.次に消化器癌術後症例においてCalorie/N比を150前後に設定したconventional Total Parenteral Nutrition(TPN)を施行し,さらに胃癌術後症例で術直後よりfull strength量のアミノ酸を投与したTPNを行い,BCAAの蛋白質代謝と生体防御修復能に及ぼす効果を探究した.また両TPN方式を比較することにより術後侵襲期における各栄養素の妥当性について検討を加え,以下の結果を得た.
1)侵襲下の肝臓におけるBCAAのエネルギー・蛋白質代謝促進効果が実験的に確認された.
2)臨床的研究でBCAAの多量投与による蛋白質代謝改善効果が見られ,さらに免疫能・創傷治癒因子・オプソニン活性といった手術侵襲に対する生体の防御修復能の維持改善が観察された.
3)侵襲反応が生理的に代償されている中等度侵襲下では術後早期からのアミノ酸投与により初期に蛋白質代謝の著明な改善が認められ,アミノ酸・糖・脂肪等の適切な配合により血漿製剤の使用が軽減できることが示唆された.

キーワード
手術侵襲, エネルギー・蛋白質代謝, 生体防御修復能, 分岐鎖アミノ酸


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