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日外会誌. 91(8): 1023-1030, 1990


原著

肺保存における温阻血再灌流障害に対する白血球除去の効果について

1) 自治医科大学 大宮医療センター心臓血管外科
2) 自治医科大学 胸部外科
3) 東京大学 先端技術研究所

井手 博文1) , 井野 隆史1) , 長谷川 嗣夫2) , 松本 博志3)

(1989年9月28日受付)

I.内容要旨
肺移植における移植後に認められるreperfusion injuryには多核白血球等から産生される活性酸素が関与する事が指摘されてきた.そこで,今回我々は雑種成犬を用い,in vivoに温阻血再灌流モデルを作製し,白血球フィルターを使用し末梢血白血球除去を行いその効果を判定した.雑種成犬12頭を用い,左開胸左肺hilar strippingを行い,2時間温阻血,2時間再灌流モデルを作製した.これを2群に分け,Group A(n=7)ではテルモ社製Imuguard IG-200により計3回の末梢血in vivo filtrationを行い,Group B(n=5)ではその対象群とした.2.TBA法による肺組織MDA測定では,Group Bでは再灌流後2時間における肺組織MDA値は有意に(p<0.01)上昇したが,Group Aではこれが有意に(p<0.05)抑制された.3.肺組織障害の検索として再灌流2時間後採取した肺組織の病理組織学的所見では,Group Bにて認められた肺浮腫組織障害の程度が,Group Aでは軽度であり,同時に測定した肺組織湿乾燥重量比測定では,両群ともコントロール値に比し,有意に上昇したものの,Group A値はGroup B値に比し有意に(p<0.05)抑制された.4.末梢血白血球数測定からフィルター使用Group Aにおいて,再灌流後,肺から白血球efflux効果が認められた.以上より,末梢血白血球除去は,温阻血再灌流肺組織の活性酸素産生抑制に有効であり,同時に肺組織障害を軽減するものと考えられた.

キーワード
肺保存, 再灌流障害, 白血球除去, 活性酸素


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