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日外会誌. 91(8): 1016-1022, 1990


原著

脳灌流の立場からみた拍動流体外循環の臨床的検討

山形大学 医学部第2外科

河野 道夫 , 折田 博之 , 島貫 隆夫 , 深沢 学 , 乾 清重 , 鷲尾 正彦

(1989年9月13日受付)

I.内容要旨
中等度低体温を用いた成人開心術症例で定常流体外循環11例(以下A群),拍動流体外循環12例(以下B群)の23例について,電磁流量計を用い左総頸動脈血流量を測定することにより,脳血管抵抗および脳組織代謝の面から拍動流体外循環の有用性について検討した.B群では左総頸動脈圧をモニターすることにより実際に脈圧がどの程度頭部に伝わっているのかを撓骨動脈圧と比較することにより検討した.脳血管抵抗は体外循環前の値を100%とすると体外循環中A群87.5±9.4%(平均±標準偏差),B群78.2±13%,体外循環終了後はA群70.5±6.5%,B群59.3±7.9%と体外循環終了後B群で有意に低下していた(p<0.05).脳酸素消費量は,体外循環前の値を100%とすると体外循環中A群52.1±9.9%,B群50.3±16%,体外循環終了後はA群120.5±25%,B群118.4±27%と両群間に差は無かったが,脳動静脈酸素含量較差は,体外循環前A群7.4±1.9vol%,B群7.6±2.0vol%に対し,体外循環中はA群3.1±0.3vol%,B群3.5±1.0vol%,体外循環終了後はA群5.6±1.4vol%,B群6.7±1.2vol%と体外循環終了後B群にて脳動静脈酸素含量較差は開く傾向がみられた(p<0.1).B群における脈圧は体外循環中撓骨動脈圧モニターで15.1±5.8mmHgと低く,左総頸動脈圧モニターでは8.5±5mmHgとさらに低い値を示した.以上より中等度低体温における拍動流体外循環は左総頸動脈圧モニターにて10mmHg以下の少ない脈圧であるにもかかわらず脳血管抵抗を減少させ脳組織における微小循環を良好に保つことにより脳組織代謝にとっても有利に働くことが示唆された.

キーワード
拍動流体外循環, 脳血管抵抗, 脳酸素消費量, 左総頸動脈血流量, 脈圧


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