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日外会誌. 91(8): 1011-1015, 1990


原著

シクロスポリン使用腎移植患者におけるガンマーインターフェロンおよびインターロイキン1産生抑制
ーcDNA を用いた mRNA レベルでの検討ー

京都府立医科大学 第2外科

吉村 了勇 , 岡 隆宏 , 濱島 高志 , 李 哲柱 , 大坂 芳夫 , 平川 一典

(1989年3月17日受付)

I.内容要旨
シクロスポリン(CsA)の腎移植患者における免疫抑制効果を検討する目的で,患者末梢血単核球(PBMC)が産生するガンマーインターフェロン(γ-IFN)およびマクロファージ(mφ)が産生するインターロイキン1(IL-1)活性を培養上清のレベルで測定するとともに,comprimentary DNA(cDNA)を用いたハイブリダイゼイション法によりmesenger RNA(mRNA)レベルで検討した.CsA投与腎移植患者42名の平均γ-IFN産生は54.3±12.4IU/mlで23名の健常人平均134.6±18.6IU/mlにくらべて約60%の抑制が認められた(p<0.01).
20人の透析患者ではこのような抑制が認められず(130.7±16.8IU/ml,NS),また22人のアザチオプリン(Az)使用腎移植患者でも平均96.0±16.1IU/mlとCsA使用患者にくらべて抑制は軽度であった.IL-1産生についても20人のCsA投与患者においては平均5.1±0.7U/mlと,健常人平均13.0±2.9U/ml(n=21)に比べて約60%の抑制が認められた.透析患者では平均15.5±4.7U/mlと健常人平均よりむしろ高値であったが統計学的優位差は認められなかった.Az使用患者においては10.1±2.7U/mlとγ-IFNと同様にCsA患者に比べて抑制は軽度であった.γ-IFNおよびIL-1(α,β)に対するcDNAを用いてmRNAレベルで検討したところ培養上清における測定と同様CsA患者において著明な発現抑制が認められた.CsAによる免疫抑制の機序の一つとして,mRNAへの転写以前のレベルでγ-IFNやIL-1産生を抑制することで免疫抑制効果を示すと考えられた.

キーワード
シクロスポリン, ガンマーインターフェロン, インターロイキン1, mRNA, cDNA


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