[書誌情報] [全文PDF] (5261KB) [会員限定・要二段階認証]

日外会誌. 91(8): 1001-1010, 1990


原著

黄色肉芽腫性胆囊炎の臨床病理学的検討

石川県立中央病院 一般消化器外科
*) 石川県立中央病院 放射線科
**) 石川県立中央病院 病理科

北川 晋 , 中川 正昭 , 山田 哲司 , 森 善裕 , 清水 博志*) , 車谷 宏**) , 林 守源**)

(1989年6月30日受付)

I.内容要旨
黄色肉芽腫性胆嚢炎Xanthogranulomatous Cholecystitis(以下XGC)は胆嚢壁内に肉芽腫を形成する比較的稀な胆嚢炎の一亜型と考えられており,時に胆嚢癌と鑑別を要することがある点で臨床上重要である.過去8年間に当科で経験した44例のXGCについて臨床病理学的検討を加えた.XGC例では一般の胆嚢炎に比し高齢男性に多く,開腹術の既往や糖尿病,心疾患,悪性腫瘍を合併している頻度が高かった.術前血液所見では,白血球増多,肝機能障害,胆道系酵素異常を示す例が多く,また6例にCA19-9異常高値を認めた.画像診断上7例が胆嚢癌と術前診断されたが胆嚢癌は7例中2例にのみ併存した.これら画像診断所見をretrospectiveに検討した結果,contrast enhancement CTにおける粘膜面の一様な濃染像,壁内のlow density massの存在により癌との鑑別が可能であることが明らかとなり,最近の2例は正しくXGCと術前診断し得た.手術時,大多数の例で胆嚢壁は硬く肥厚し,周囲臓器との高度の癒着により肉眼的に癌は否定し得ず術中迅速病理診断を必要とした.切除胆嚢では多くは高度の胆嚢炎の所見とともに,肥厚した壁内に数mmから7.8cm径に及ぶ黄色肉芽腫を認め,時に肝床部等への浸潤発育がみられた.胆石は90%に認めたが,有石例では全例に結石の胆嚢頸部への嵌頓を伴うこと,また無石例でも頸部の癌腫や術後胆汁鬱滞などが存したことから,何らかの原因による胆嚢内圧亢進機転が本症の発生機序と密接に関連していることが窺われた.また本症は決して稀で特殊な胆嚢炎ではなく,ある種の全身的局所的状態下で発症する胆嚢炎そのものの発生および進展と深く関わっている病態であることが示唆された.胆嚢炎の診断治療上,さらに胆嚢癌の鑑別疾患としてXGCに対する認識を持つ必要があると考えられた.

キーワード
黄色肉芽腫性胆囊炎, Xanthogranulomatous cholecystitis, 胆囊癌, contrast enhancement CT, intramural extravasation of bile


<< 前の論文へ次の論文へ >>

PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。