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日外会誌. 91(7): 901-906, 1990


原著

Flow cytometry を用いた肺癌の原発巣と転移巣の細胞内 DNA 量 RNA 量の検討

1) 大分県立病院 胸部血管外科
2) 長崎大学 医学部第1外科
3) 国立嬉野病院 外科

山岡 憲夫1) , 田川 泰2) , 綾部 公懿2) , 川原 克信2) , 木田 晴海3) , 内山 貴堯1) , 富田 正雄2)

(1989年8月16日受付)

I.内容要旨
肺癌の原発巣と転移巣間において細胞生物学的特性や細胞の増殖活性に差異があるか否かを検討するため,Flow cytometryを用いてAcridine Orange染色法にて原発性肺癌12例の肺原発巣と転移巣および部位の異なる各転移巣間の細胞内DNA量と細胞内RNA量の2つparameterの解析を行った.また,転移の生物学的特性についても検討した.原発性肺癌12例中原発巣と転移巣の細胞内DNA量解析で5例42%と多数のheterogeneityが認められた.また,これら5例とも原発巣に比べて転移巣の細胞内DNA量が高かった.細胞内RNA量は両者間で12例中10例に差を認め,その細胞内RNA量は転移巣が原発巣に比べて有意に(p<0.05)増大していた.また,同一症例で3例の異なった部位の転移巣間の解析では細胞内DNA量は転移部位,臓器に関わらずすべて同一であった.
以上より,肺癌の原発巣と転移巣の間では細胞内DNA量でかなりの症例でheterogeneityが認められるとともに,増殖活性を表す細胞内RNA量にも差がみられ,両者間でその細胞の増殖動態も異なっており,肺癌の治療では外科的治療と共に殺細胞効果の異なる種々の補助療法の併用が望まれる.また,転移を示す癌細胞の生物学的特性として,より細胞内DNA量の高い細胞が転移し易いことや,転移巣の方が原発巣に比べて癌細胞の増殖活性が充進していることなどが判明した.

キーワード
肺癌, Flow cytometry, 転移, 細胞内 DNA 量 RNA 量, Heterogeneity

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