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日外会誌. 91(7): 883-888, 1990


原著

多変量解析による En bloc 法拡大乳切とその他の乳癌根治術症例の比較

1) 金沢大学医学部付属病院 手術部
2) 金沢大学医学部付属病院 第2外科

野口 昌邦1)2) , 谷屋 隆夫2) , 小矢崎 直博2) , 宮崎 逸夫2)

(1989年9月13日受付)

I.内容要旨
私共は,胸骨傍リンパ節転移巣の完全廓清を計るため,胸骨縦切開胸壁切除によるEn bloc法拡大乳房切断術(以下,En bloc法拡大乳切と略する)を開発し,1980年より1985年までに118例に行ってきた(EXT群).一方,それ以外に1973年より1985年にかけて種々の乳癌根治術を105例に行ってきた(RDL群).これら両群症例は補助療法など背景因子が異なっており,今回,多変量解析を用いてRetrospectiveに分析し,胸骨傍リンパ節郭清の意義を検討した.先ず,一変量解析の結果,全体の5生率はEXT群で91±2.6%,RDL群で83±3.7%であり,有意の差を認めなかった.また臨床病期や腫瘤占拠部位別でもEXT群およびRDL群の生存率に有意の差を認めなかったが,腋窩リンパ節の転移個数別で見ると,転移個数3個以内では,EXT群が91%, RDL群が79%で有意の差はないものの,EXT群が若干,良好であった.しかし,両群間の背景因子が異なっており,年齢,月経,臨床病期,腫瘤占拠部位,組織型,腫瘤の最大径,胸骨傍リンパ節の状態,鎖上リンパ節郭清,化学内分泌療法および放射線療法の有無などの背景因子をCoxの重回帰型ハザードモデルによる多変量解析により補正を行った結果,EXT群およびRDL群の5生存率はそれぞれ93%,77%であり,EXT群が有意に良好であった(p=0.03).更に腋窩リンパ節の転移個数別で見ると,有意の差はないものの,転移個数3個以内で最もEXT群が良好であった(p=0.18).以上より,En bloc法拡大乳切は腋窩リンパ節の転移個数3個以内の症例の予後向上に有用であることが示唆された.

キーワード
乳癌, 拡大乳切, 多変量解析

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