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日外会誌. 91(7): 875-882, 1990


原著

乳癌患者血清中の Sex Hormone-Binding Globulin 測定の意義

徳島大学 医学部第2外科

住永 佳久 , 森本 忠興 , 駒木 幹正 , 森 俊明 , 門田 康正

(1989年8月30日受付)

I.内容要旨
乳癌における,血中のエストラジオール(以下E2)やテストステロンなどのステロイドホルモンと特異的に結合する血清蛋白sex hormone-binding globulin(以下SHBG)について検討した.
乳癌患者および健常婦人血清中のSHBGの測定は,モノクローナル抗体を用いたimmuno-radiometric assay法によりおこなった.また血中E2濃度,乳癌組織中のエストロゲンレセプター(以下ER),プロゲステロンレセプター(以下PgR)を測定し,さらに対象例の肥満指数を算出した.
SHBG値は,乳癌群64.2±32.0nmol/ml,健常群44.5±18.6nmol/mlで,両群の間に有意差を認めなかった.一方,両群の閉経の前後で検討すると,閉経後において,乳癌群63.8±31.2nmol/ml,健常群40.1±15.4nmol/mlとなり,閉経後乳癌群は閉経後健常群に比べて, SHBGは有意に高値を示した.さらに閉経後乳癌群をERの有無で検討すると, SHBG値はER(-)群97.8±12.7nmol/ml, ER(+)群55.8±32.1nmol/mlとなり, ER(-)乳癌群は, ER(+)乳癌群に比べて, SHBGは有意に高値を示した.閉経後の乳癌群と健常群では,肥満とSHBG値の間,および血中E2濃度とSHBG値の間には有意な関連性は認められなかった.また閉経後乳癌のSHBG値は,根治手術後3ヵ月でおよそ34%の有意な低下を示した.
以上より,閉経後健常群に比べて閉経後乳癌群でSHBGが高値を示したのは,主にER(-)乳癌群のSHBG値が高かったためであることが解った.この要因として肥満度あるいは血中E2濃度の有意な関与は認めがたく,乳癌摘除にてSHBG値の有意な低下がみられたことより,乳癌組織中でのSHBG新生の可能性が推測された.

キーワード
乳癌, sex hormone-binding globulin (SHBG), エストロゲンレセプター, 肥満, エストラジオール

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