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日外会誌. 91(7): 827-836, 1990


原著

Flow cytometry を用いた制癌剤感受性試験
ー胃癌細胞株による基礎的研究ー

新潟大学 医学部第1外科教室(主任:武藤輝一教授)

片柳 憲雄

(1989年8月9日受付)

I.内容要旨
ヒト胃癌由来の細胞株MKN28,MKN45,KATOIIIに対する制癌剤(CDDP,ADM,MMC,5FU)の影響を,DNA/BrdU二重染色法によるflow cytometryを用いて細胞動態の面から検討した.更に,細胞動態の解析が制癌剤感受性試験として応用可能か否かを,制癌剤に対する細胞の増殖抑制効果,および,コロニー形成能と比較検討し考察した.
制癌剤の濃度は臨床での薬剤投与後の最高血中濃度を基準として,その1/100倍から10倍までの4段階とした.5FUは持続接触で,他の3剤は1時間接触で作用させた.効果判定は,薬剤接触48時間後の%増殖率が50%以下,2週間後のコロニー形成率が50%以下をそれぞれ“感受性あり”とした.
細胞の増殖抑制効果とコロニー形成率からみた感受性は,CDDPとの接触におけるMKN28,KATOIIIを除いて一致した.
細胞動態をみると,3株ともCDDP,ADM,MMCの影響は,①最高血中濃度における24時間後から72時間後までの持続的な有意なG2期の増加,②最高血中濃度における48時間後のBrdU標識率の有意な低下としてとらえられた.この2点のうち少なくとも一方を満たすものを細胞動態からみた制癌剤の“感受性あり”として判定すると,CDDPではMKN28とMKN45が,ADMとMMCでは3株とも感受性を認めた.増殖抑制効果とはCDDPにおけるMKN28が,また,コロニー形成率とはCDDPにおけるKATOIIIが一致をみなかった.このassayは細胞周期をみながら6日間で判定可能であるが,他の3剤と作用機序の大きく異なる5FUに当てはめることはできなかった.
以上より,fiow cytometryを用いた細胞動態の解析が,制癌剤の作用機序を考慮し制癌剤を選択した上で実施することにより,制癌剤感受性試験としての臨床的意義をもつことが示唆された.

キーワード
flow cytometry, 制癌剤感受性試験, DNA/BrdU 二重染色法, 細胞動態, BrdU 標識率


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