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日外会誌. 91(5): 622-630, 1990


原著

マイクロ波サーモグラフィによる乳腺疾患の診断
ー乳腺疾患の各因子別にみた補助診断法としての検討ー

日本医科大学 第2外科学教室(主任:庄司佑教授)

前田 隆志

(1989年5月28日受付)

I.内容要旨
1982年より女性乳腺疾患患者に対し,より深部の腫瘍近傍の温度情報を得る目的として4.7GHzのマイクロ波サーモグラフィ(MWT)を用い診断を行って来た.対象は悪性疾患95例,良性疾患331例の計426例である.その診断結果はspecificity 91.3%,sensitivity 72.6%,predictability 70.4%,accuracy 87.1%であった.マイクロ波の組織浸透特性により赤外線テレサーモグラフィ,コンタクトサーモグラフィとは異なる温度情報が得られ,従来のサーモグラフィにMWTを併用することにより正診率は94.7%となり約10%のaccuracyの向上が認められた.
乳腺疾患の各因子別にみると,組織型においては有意差は認められなかった.腫瘍径においても有意差は認められなかったが,この中でT1症例に対し,従来のサーモグラフィ2法併用で75.0%の正診率であったが,これにMWTを併用する事により正診率は100%となった.腫瘍深度別診断では有意差はなく,腫瘍の深さによる影響は認められなかった.腫瘍血管密度においては,MWTで測定した温度差との間に高い相関関係(p<0.01)が認められた.
今回の検査結果により,乳腺疾患に対する補助診断法としてのMWTの有用性が示唆されたが,今後マイクロ波の特性を生かし,より精度の高い,更に深部の疾患に対する画像診断としての発展が期待される.

キーワード
マイクロ波, サーモグラフィ, 乳腺疾患, 腫瘍血管密度


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