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日外会誌. 91(4): 508-514, 1990


原著

ヒト乳癌における HLA (Human Leucocyte Antigen) 発現に関する免疫組織化学的研究

神戸大学 医学部外科学第1講座(指導:斉藤洋一教授)
*) 兵庫県立成人病センター 外科

中澤 健 , 山本 恭助 , 河野 範男*) , 斉藤 洋一

(1988年10月26日受付)

I.内容要旨
ヒトの主要組織適合抗原であるHLAは外来抗原に対する免疫機構発現に極めて重要な役割を有する.このうちクラス1抗原は細胞性免疫機構発現に必須の抗原で,ほとんど統べての正常細胞上に存在するが,組織の腫瘍化にともない陰性化する場合のあることが知られ,その生物学的意義が注目されている.
今回われわれは乳癌症例109例の手術摘出標本に於て腫瘍組織のHLA発現をモノクローナル抗体を用いた免疫組織化学的手法により検索し,臨床・病理像との関連を検討した.
その結果乳癌におけるHLA陽性率は44%であり,これを組織型別にみると,予後良好で分化型乳癌と言われている乳頭腺管癌で,最も発現率が高く(68%),予後不良な未分化乳癌とされる硬癌で最も低かった(28%).また,腫瘍周囲のリンパ球浸潤の程度との関連を見ると,リンパ球浸潤の少ない症例にHLA陰性例が多く(70%),逆に強度のリンパ球浸潤を認めた症例はすべてHLA陽性であった.
これらのことから乳癌におけるHLA陰性化は腫瘍の分化度と相関するほか,腫瘍局所に於ける免疫機構の発現にも関与し,予後とも深く相関することが伺われ,極めて重要な生物学的意義を有することが示唆された.

キーワード
HLA, 乳癌, 組織型, リンパ球浸潤, 腫瘍免疫


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