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書誌情報]
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日外会誌. 91(4): 500-507, 1990
原著
甲状腺癌術後の骨代謝障害の検討
ー定量的 CT 法を用いてー
I.内容要旨甲状腺全摘後の骨代謝障害の有無が議論されている.甲状腺分化癌は,比較的若年の女性に好発する,予後の良好な悪性腫瘍である.そのため,術後の骨代謝障害の有無は重要である.今回,甲状腺癌術後患者の骨塩量を定量的CT法により測定し,若干の知見を得た.横浜市立大学第1外科の甲状腺外来通院中の甲状腺癌術後症例38例を対象とした.全例,甲状腺乳頭癌である.その内訳は全摘群17例(男性3例,女性14例,平均年齢57.3歳),非全摘群(葉切除後)21例(男性3例,女性18例,平均年齢51.0歳)であり,38例の健康な男女を対照群として比較検討した.
骨塩量の評価方法には定量的CT法を用いて,患者腰椎の海綿骨のbone mineral contentを測定した.同時に血中骨代謝パラメータを測定した.全摘群,非全摘群,および対照群の平均骨塩量はそれぞれ139.2,153.8,138.6mg/cm
3であり各群間には有意差を認めなかった.各症例の骨塩量を同じ年齢,性別による標準骨塩量で除した値を,BMC-indexと規定し,骨塩量の性差,年齢による補正を加えて比較したが,全摘群に骨代謝障害を示唆するデータは認められなかった.また,術後年数と骨塩量,BMC-indexとの間にも有意な相関を認めなかった.血中のcalcitonin,PTHの値についても全摘群に有意な低下を認めず,calcitonin値と骨塩量,BMC-indexとの間には,有意な相関を認めなかった.
以上より,甲状腺全摘後において骨代謝障害を認めず,血中calcitonin値の低下も認めなかった.血中calcitoninは生理的な量が保たれていれぽ骨代謝には影響を及ぼさないと考えられた.
キーワード
甲状腺全摘, quantitative CT, 骨塩量, calcitonin
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