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日外会誌. 91(3): 411-418, 1990


原著

原発巣の進展形式からみた乳房温存療法の適応に関する研究

1) 東京女子医科大学付属第二病院 外科
2) 東京女子医科大学 放射線科

芳賀 駿介1) , 蒔田 益次郎1) , 清水 忠夫1) , 飯田 富雄1) , 今村 洋1) , 梶原 哲郎1) , 大川 智彦2)

(1989年4月17日受付)

I.内容要旨
目的:欧米では,乳癌に対して乳房温存治療が広く用いられている.しかし,いまだ腫瘍径からみた適応,局所再発の要因などの研究を要する課題も少なくない.そこで,局所再発の重要な因子である癌遺残の危険性について,臨床病理学的に検討した.
対象および方法:対象は乳癌取扱い規約によるt1,t2乳癌で,組織型は非浸潤性,浸潤性乳管癌,粘液癌の乳房切断206例である.これらを癌胞巣の形態から面疱型,乳頭型,粘液型,乳頭管状・飾状,小充実腺管胞巣,大充実腺管胞巣,硬化型胞巣,純硬型の8型の組織亜分類を行い,癌の乳管内進展,リンパ管侵襲,リンパ節転移などのリンパ系進展の程度から,癌遺残の危険性について検討した.なお,腫瘍の進展形式は乳管内進展,限局発育,乳管外進展の3型,リンパ管侵襲は腫瘍近傍,腫瘍縁から5mm以上に分類した.
結果:
1.乳頭内進展型は,面庖型,乳頭型,粘液型の順であった.また,非浸潤性乳管癌8例だけをみると,乳頭内進展型が7例を占めた.
2.腫瘍縁から5mm以上はなれてリンパ管侵襲がみられたものは,小充実腺管巣が22.7%と最も高率であった.
3.リンパ節転移率は,小充実腺管胞巣,純硬型がそれぞれ63.6,61.7%と高率で,転移4個以上のn1β以上も両者が高率であった.
4.乳管内進展型ぱt1 32.6%,t2 47.0%で,t2に高かった.
5.腫瘍縁から5mm以上はなれてリソバ管侵襲がみられたものは,t1 7.2%,t2 9.8%で両者に差はみられなかった.
6.リンパ節転移陽性率はt1 28.9%,t2 52.0%で,n1β以上もt2では高率であった.
結論:癌遺残の危険の高いものは,乳管内進展からは非浸潤性乳管癌,浸潤性乳管癌では面庖型,乳頭型,リンパ系進展からは小充実腺管胞巣,純硬型で,腫瘍径は2cm以上のものと思われた.

キーワード
乳房温存治療, 乳癌


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