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日外会誌. 91(3): 401-406, 1990


原著

甲状腺髄様癌症例における血漿 calcitonin gene-related peptide の血清学的検討

1) 帝京大学 医学部第1外科
2) 伊藤病院 

高見 博1) , 四方 淳一1) , 尾崎 修武2) , 三村 孝2) , 伊藤 国彦2)

(1989年4月20日受付)

I.内容要旨
Calcitonin gene-related peptide(CGRP)はラットカルシトニン(CT)遺伝子から転写されたmRNAが異なったsplicingを受けることにより生産されるペプタイドで甲状腺髄様癌細胞などでの発現が認められている.著者らは髄様癌におけるCGRPの動態を明らかにするために,CGRPのRIA法を確立し,甲状腺疾患症例の血漿CGRP値を測定した.髄様癌症例の血漿CGRP値(正常値く12.7pg/ml)は,術前5例では128pg/mlから2,010pg/mlと全例著しく高値を示した.また,術後(再発)症例17例ではCGRPは17例中10例が陽性であった.一方,未分化癌,悪性リンパ腫,濾胞腺腫,腺腫様甲状腺腫らの腫瘍(性)病変をはじめ亜急性甲状腺炎,慢性甲状腺炎,バセドウ病などの甲状腺疾患症例96例ではCGRPの陽性率は低かった.グルコン酸カルシウムとペンタガストリンによる負荷試験を髄様癌症例12例(術前1例)に施行した.血漿CGRPは血清CT値とほぼ並行した動態を示したが,その上昇率(ピーク時の測定値/基礎値)はCTより低かった.特にaggressiveに進行した低分化型髄様癌3例ではCGRPの上昇率は1.4~2.0倍となり,高分化型9例の2.8~23.3倍(平均7.6倍)より低値を示した.同様にCTにおいても,低分化型は1.8~4.1倍となり高分化型の4.5~68.3倍(平均19.6倍)より低かった.以上より,CGRPは髄様癌のhumoral markerと考えられ,悪性度に関連していることが示唆された.

キーワード
甲状腺髄様癌, calcitonin gene-related peptide, カルシトニン, 腫瘍マーカー


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