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日外会誌. 91(3): 348-353, 1990


原著

胃癌のDNA ploidy patternと組織型, 浸潤形式との関連性

福井医科大学 第1外科

広瀬 和郎 , 中川原 儀三

(1989年5月9日受付)

I.内容要旨
90例の外科切除胃癌例を組織型別に分化型胃癌40例と未分化型胃癌50例に分け,両者の進行度,深部浸潤形式と癌の核DNA ploidy patternとの関係を比較検討した.DNAの定量には顕微蛍光測光法(分裂中期核測定法)を用いた.その結果,1)胃癌のDNA ploidy patternは,stem cell lineにより二倍体(diploid,D型)60例と異倍体(aneuploid,A型)30例に分けられた.2)分化型胃癌でも未分化型胃癌でも,D型がそれぞれ,23例(57.5%),37例(74%)と多数を占めた.A型の癌は,未分化型では早期癌のうちは19例中2例(9.5%)ときわめて少なく,進行癌で29例中11例(37.9%)と増加したのに対し,分化型では早期癌で既に21例中10例(47.6%)に見られ,進行癌における頻度(7/19例,36.8%)と有意な差異を認めなかった.3)深達度sm以下の浸潤癌の深部浸潤形式を漏斗型,箱型,山型に分け,ploidy patternとの関係を検討すると,未分化型癌では浸潤の高度な山型の発育を示す21例のうち11例(52.4%)までが,A型で占められたのに対し,浸潤の軽微な漏斗型の発育を示す症例ではA型の癌は見られず,ploidy patternにおけるaneuploidの出現は深部浸潤形式と密接な関連性を有していた.一方,分化型癌では,粘膜内癌や漏斗型発育を示す浸潤癌でもA型の癌が多数見られ,aneuploidの出現と深部浸潤形式との間には明らかな関連性は認められなかった.
以上より,ploidy patternにおけるaneuploidの出現は,未分化型胃癌では癌の進展や深部浸潤形式と密接に関連しているのに対し,分化型胃癌ではこのような関連性は明らかでないと結論された.

キーワード
胃癌, DNA ploidy pattern, diploid, aneuploid


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