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日外会誌. 91(3): 340-347, 1990


原著

残胃癌29例の検討
ー癌占居部位からみた残胃癌の発生増殖促進因子の推察ー

金沢大学 医学部第2外科

小坂 健夫 , 鎌田 徹 , 藤村 隆 , 長谷川 啓 , 米村 豊 , 三輪 晃一 , 宮崎 逸夫

(1989年4月25日受付)

I.内容要旨
残胃癌を初回手術からの間隔が10年以上のものと定義した.その再建法および占居部位の分析より,残胃発癌増殖を促進する因子を推察した.
その結果,21年間に集積された残胃癌は29例で,平均年齢は59歳,男女比は3.8であった.初回手術時の疾患名は胃潰瘍16,慢性胃炎2,胃ポリープ2,十二指腸潰瘍5の良性疾患25および胃癌4であった.再建法はBillroth I法(以下B-1法)10例,Billroth II法(以下B-II法)18例,Roux-en Y法1例であった.同時期の対照胃癌と比較して,肉眼型や組織型では差は認めなかったが,組織学的進行度ではstage IVが59%をしめ多かった.占居部位を吻合部(胃腸吻合部),断端部(吻合部以外の胃切除断端の埋め込み部),その他(大蛮,後壁など)に分けると,B-1法では断端部7その他3であるのに対し,B-II法では断端部5その他3に加え吻合部10を認め, B-II法では吻合部の残胃癌が多かった(p<0.05).初回手術から残胃手術までの間隔はB-1法とB-II法との間には差を認めないが,占居部位別に検討すると,断端部16.8年に対し,吻合部24.5年と,吻合部の残胃癌はより遅れて発生していた(p<0.05).背景粘膜の検討では,小円型細胞浸潤や腺の腸上皮化生は残胃癌のほぼ全例に認められた.腺の萎縮は,B-I法でやや多く,囊状拡張はBII法でやや多くみられるものの有意差は認めなかった.
以上より残胃癌のうち吻合部の癌ex B-II法に多くみられた.またそれは断端部の癌と比較して初回手術からの間隔が長く発生機序の違いが示唆された.すなわち,B-II法後の吻合部に発生する残胃癌では,その発生増殖機序の一端として胆汁膵液を含む十二指腸液にさらされることが促進的に作用する因子である可能性が示唆された.

キーワード
Cancer of the gastric remnant, distal gastrectomy, Billroth II reconstruction, duodenogastric reflux, carcinogenesis


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