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日外会誌. 91(2): 266-271, 1990


原著

開心術後閉胸困難症例についての臨床的検討
ー主として手技及び管理上の問題点についてー

大阪大学 医学部第1外科

阪越 信雄 , 松田 暉 , 中埜 粛 , 門場 啓司 , 澤 芳樹 , 川島 康生

(1989年3月14日受付)

I.内容要旨
開心術後の一期的閉胸困難症例について胸骨開放中の縦隔隔離の方法と予後の関係,二期的胸骨閉鎖(DSC)の時期について検討した.対象は1981年から1986年にかけての先天性心疾患9例,後天性心疾患4例で,4例の成人例を含み,年齢は1ヵ月~76歳平均21歳であった.手術はRastelli手術4例,Fontan手術3例,心室中隔形成術, Senning手術,僧帽弁置換術,大動脈弁再置換術, ACバイパス術,大動脈人工血管置換術各1例である.12例は術後高度心拡大や周辺浮腫による閉胸時のタンボナーデ様症状のため,1例は大量出血のため胸骨開放とした.縦隔隔離の方法として,前半の7例(A群)には人工物で皮膚の補填を行い,後半の6例(B群)では充分授動した皮膚弁を用い皮膚直接閉鎖を行った.全体での手術死亡は5例(39%),病院死亡は2例(15%)で,長期生存は6例(46%)であった.A群7例中4例(57%)が死亡し,2例は低心拍出量症候群(LOS),2例は縦隔炎からの敗血症によるものであった.B群6例中3例(50%)が死亡した.2例がLOS,1例が多臓器不全によるものであり,縦隔炎の合併は認めなかった.DSC不成功に終わった症例は,胸骨開放中に中心静脈圧(CVP)や左房圧(LAP)が低下せず,必要カテコラミンがほとんど減量できない症例であった.以上より,1)胸骨開放中の縦隔炎の予防には人工物を用いた縦隔隔離法に比し形成外科的工夫を加えた皮膚直接閉鎖法がより有効であった.2)胸骨開放中にCVP, LAPの低下,必要カテコラミンの減量などが認められない症例でのDSCは不成功であった.3)胸骨閉鎖困難症例の予後はその基礎疾患の影響もあり,縦隔隔離の方法による差は生じなかった.

キーワード
一期的閉胸困難, 二期的胸骨閉鎖, 縦隔隔離法, advancement skin flap


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