[書誌情報] [全文PDF] (2665KB) [会員限定・要二段階認証]

日外会誌. 91(2): 201-205, 1990


原著

腹膜再発胃癌症例に対する手術と腹腔内温熱灌流併用療法の臨床成績

千葉大学 医学部第1外科

藤本 茂 , セレスタ RD , 国分 和司 , 小林 国力 , 木内 宗三郎 , 金野 千行 , 奥井 勝二

(1989年4月3日受付)

I.内容要旨
腹膜再発胃癌6例に対してmitomycin C(MMC)を使用した腹腔内温熱灌流(intraperitonealhyperthermic perfusion-IPHP)と外科手術の合併療法を行い,その制癌効果を同一期間内にIPHPを併用せず外科手術終了時にMMC 10mgの腹腔内投与の対照群5例と比較検討した.IPHPは外科手術直後に流入管と流出管を上腹部とダグラス窩に挿入固定し,30~32℃の低体温下にMMC 10μg/mlを含む灌流液を閉鎖回路により120分間灌流した.流入管と流出管内の平均灌流液温は,それぞれ46.5±1.1℃,45.1±0.5℃であり,IPHP終了時における灌流液MMC濃度は4.3μg/mlであった.11例の腹水あるいは腹腔内洗浄液は全て癌細胞陽性であったが,IPHP群の6例は術後全例陰性となった.対照群の平均生存期間は3.0±2.1月であるのに対し,IPHP併用群は6例中2例が現在生存中であり,その平均生存期間は13.6±10.6月である.生存率のgeneralized Wilcoxon(G-WC)法とLogrank(LR)法による検定では,それぞれの検定においてp=0.012,p=0.008においてIPHP群が優れた生存率を示した.IPHP群は術直後に血小板と血清蛋白の一過性の減少が見られた.以上,腹膜再発胃癌症例に対する手術とIPHPの併用療法は,腹腔内癌細胞の消失と生存期間の延長が見られたことより,現在最も有効な治療方法の1つと考えられる.

キーワード
腹膜再発胃癌, 腹腔内温熱灌流


<< 前の論文へ次の論文へ >>

PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。