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日外会誌. 91(2): 169-173, 1990


原著

ESRによるマウス正常主要臓器および障害膵におけるフリーラジカルの検出

京都大学 医学部第1外科

野中 敦 , 真辺 忠夫 , 田村 耕一郎 , 浅野 昇 , 今西 勝大 , 山木 健一郎 , 戸部 隆吉

(1989年4月4日受付)

I.内容要旨
マウスの主要9臓器について,ESRを用い77Kで,フリーラジカルや遷移金属イオン等の測定を行い,臓器特異性を検索した.Mn(II)ionは,膵,小腸,胃,腎臓で容易に検出された.特に膵でシグナル強度は大きく,膵機能に於けるMn(II)イオンの関与が示唆された.他の主要臓器に於ても,特異的なシグナルパターンが認められた.C-centered radical,R-OO radical,C0Q10或は,ascorbate radicalは,いくつかの臓器で検出しえたが,これは,これらのラジカルが組織中で安定である為であろうと考えられた.脳,心,膵については,摘出後,6時間,24時間と経時的にESR測定を行い,N-centered radical heme-NO adductと考えられるシグナルを検出し,組織の変性過程に共通して認められる生体内変化(蛋白融解や壊死)の検出に,ESRが有用であることが示唆された.叉,障害膵モデルを用いて,freeze trap(77K),DMPO-spin trapping法(25℃)を施行しフリーラジカルの検出を試みた.freeze trapでは,正常膵と有意差なく,活性酸素種の直接的検出は,不可能であったが,spin-trapping法では,3-Line,6-Line,DMPO-OH adductと考えられるシグナルを検出しえた.このことから,障害膵組織は,非常に酸化的環境下にあることが示唆された.

キーワード
ESR (electron spin resonance), フリーラジカル, 活性酸素, DMPO-spin trapping 法, 急性膵炎


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