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日外会誌. 91(1): 95-100, 1990


原著

ラット肝虚血における活性酸素の役割
―α-tocopherol と allopurinol 投与による過酸化脂質とミトコンドリア呼吸能の変化について―

岡山大学 医学部第2外科学教室(指導:寺本 滋教授)

平井 隆二

(1988年9月26日受付)

I.内容要旨
近年,臓器の虚血再還流障害において,活性酸素の役割が注目されてきた.著者はラット肝部分虚血モデルを作製し,肝組織過酸化脂質とミトコンドリア呼吸機能を測定することによりα-tocopherolとallopurinolの肝虚血再還流障害に於ける効果を検討した.ラット肝の正中葉と左葉へ入る血管をクランプし,部分肝虚血モデルを作製した.虚血前,虚血後90分,及び再還流後60分に肝組織を採取し,過酸化脂質とミトコンドリア呼吸能を測定した.4群に分け,一つにはα-tocopherol(10mg/kg)を術前3日間連続腹腔内投与し,他の一つにはallopurinol(50mg/kg)を虚血開始10分前に静脈内投与した.それぞれに,プラセボ群を対象として作製した.
プラセボ投与群では再還流後に過酸化脂質の上昇がみられたことより,再還流時に活性酸素が生成して,脂質過酸化をもたらしたものと推測した.α-tocopherolにより,再還流時の過酸化脂質の上昇は抑制され,ミトコンドリア呼吸機能の低下も改善された.しかし,この改善の程度は既報告のように完全なものではなく不完全であることより再還流障害だけでは説明できず,虚血による障害も同時に考慮するべきであると示唆された.一方,allopurinol投与によって,過酸化脂質上昇の抑制もミトコンドリア呼吸機能低下の改善もされなかった.この原因として,xanthine oxidase系以外の活性酸素の生成源の存在も示唆された.

キーワード
肝虚血, 活性酸素障害, α-tocopherol, allopurinol, ミトコンドリア呼吸機能


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