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日外会誌. 90(12): 2031-2036, 1989


原著

副腎偶発腫瘤(incidentaloma)
ー自験手術例の報告と一般剖検例における副腎腫瘍の分析

東京女子医科大学 内分泌疾患総合医療センター外科

河野 通一 , 児玉 孝也 , 伊藤 悠基夫 , 小原 孝男 , 藤本 吉秀

(1989年1月17日受付)

I.内容要旨
1981年以降現在までの約7年間に,当科では94例副腎腫瘍の手術を行ったが,うち14例はCTスキャン(CT)や超音波検査(echo)などの画像診断で偶然に腫瘍が発見された,いわゆるincidentalomaであった.その内訳は褐色細胞腫9例,クッシング症候群1例,神経節細胞腫3例,皮質腺腫1例であった.褐色細胞腫9例のうち5例は高血圧を呈さなかったが,ホルモン学的には全例が異常値を示した.
一方最近4年間の日本病理剖検輯報(約153,000例)を調査したところ,転移性腫瘍を除外すると,偶発的に発見された副腎病変として,皮質腺腫310例,皮質過形成153例,褐色細胞腫39例,神経原性腫瘍17例などの記載がみられた.
皮質腺腫は剖検上高頻度に発見され,この一部のものの腫瘍径は1cm以上あると推定される.従って今後CTやechoなどでますます多数の皮質腺腫が発見されると思われるが,クッシング症候群や原発性アルドステロン症などの機能性腫瘍を見逃さないことと同時に,非機能性腺腫に対する無用な手術は極力避ける必要がある.褐色細胞腫の多くはホルモン活性を持ったものと思われ,積極的に鑑別診断を行い,手術すべきである.これら機能性腫瘍は特に高齢者で見逃されてきた可能性が高い.その他として,神経原性腫瘍や骨髄脂肪腫がincidentalomaとして発見される率が高いが,悪性腫瘍との鑑別が困難な場合を除き,手術は避けるべきものと思われる.

キーワード
副腎 incidentaloma, 日本病理剖検輯報, 皮質腺腫, 褐色細胞腫, 神経節細胞腫


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