[書誌情報] [全文PDF] (872KB) [会員限定・要二段階認証]

日外会誌. 90(12): 2021-2030, 1989


原著

ヌードマウス可移植性ヒト乳癌株を用いた乳癌に対する複合内分泌療法に関する実験的研究

慶應義塾大学 医学部外科学教室(指導:阿部令彦教授)

福富 隆志

(1989年2月7日受付)

I.内容要旨
estrogen receptor(ER)陽性ヌードマウス可移植性ヒト乳癌株3株(Br-10,MCF-7,R-27)を用いて実験的複合内分泌療法をおこなった.<材料と方法>使用薬剤はtamoxifen(TAM),aminoglutethimide(AMG),medroxyprogesterone acetate(MPA)であり,TAM+AMG,TAM+MPAの併用効果を各単剤の効果と比較検討した.移植腫瘍が対数増殖を開始する時期に,TAM 5mg/kg×2/wk,AMG 150mg/kg/day,MPA 100mg/kg×2/wkのスケジュールにて,AMGは腹腔内に他は筋肉内に3週間投与した.TAM,MPA投与群では実験終了時に腫瘍のER,PgRを測定し,またMPA投与群の血中MPA濃度,AMG投与群の血中E2濃度を検討した.抑制効果の判定はNCI protocolに準じ奏効率を算出し,また併用効果の判定はLarionovの方法によった.<結果>TAMは3剤中最もすぐれた効果を示し(奏効率100%),その効果はER系の動態と関連していた.AMGの奏効率は67%であったが,AMG投与群の雌マウスの血中E2濃度(<10pg/ml)は対照群(18pg/ml)より低く子宮重量は有意に減少していた.またTAM+AMGはBr-10(T/C20%),MCF-7(31%),R-27(22%)に著効を示し,いずれも併用効果(+)と判定された.MPA投与群の血中濃度はヒト1,200mg経口投与群より高かったがその抗腫瘍効果は低く(奏効率17%),TAM+MPAの併用効果も認められなかった(Br-10T/C 49%,MCF-7 44%,R-27 43%).以上の成績は複合内分泌療法の有用性とヒト乳癌株のホルモン依存性,内分泌療法剤に対する感受性の多様性を示唆していた.

キーワード
experimental multihormone therapy, hormone dependent human breast cancer


<< 前の論文へ次の論文へ >>

PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。