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日外会誌. 90(11): 1915-1921, 1989


原著

Vx2腫瘍細胞の横隔膜播種性進展に関する電子顕微鏡的研究

久留米大学 医学部第1外科学教室(主任:掛川暉夫教授)

難波 雄一郎

(1988年12月27日受付)

I.内容要旨
白色家兎を用い,腹腔内生理的食塩水,赤血球注入モデル,穿孔性腹膜炎モデルおよびVx2腫瘍による癌性腹膜炎モデルを作製し,各モデルについて惹起される横隔膜の超微形態学的変化を観察するとともに,播種した腫瘍細胞の横隔膜壁内進展形式についても検討し以下の結果を得た.
1) 生理的食塩水,赤血球注入モデルでは,腹膜中皮細胞自由表面に軽度のmicrovilli(微絨毛)の減少がみられるにすぎなかった.
2)横隔膜への播種はVx2腫瘍腹腔内注入後14日目以降に認められ,腹膜中皮細胞にmicrovilliの減少のほか,細胞質内に多数の空胞が出現し,小型球形化,連結離開,脱落等の所見もみられた.
3)腹膜中皮細胞が剥離,脱落し,基底膜の破壊がみられた飾状斑部では,横隔膜腹腔側に多数のstoma(細孔)が観察され,播種したVx2腫瘍細胞がこのstomaを通じてリンパ槽内へ侵入している像が観察された.
以上より,消化器癌とくに胃癌では,胃の噴門部が横隔膜に近接していることから,漿膜面より剥落した癌細胞はこのstomaを通じて,容易に横隔膜リンパ槽に波及していくことが考えられた.

キーワード
癌性腹膜炎, 横隔膜播種, 家兎 Vx2腫瘍, 篩状斑


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