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日外会誌. 90(10): 1799-1805, 1989


原著

虚血肢の再灌流に伴う組織障害に関する基礎的研究

名古屋大学 医学部第1外科(主任:塩野谷恵彦教授)

池澤 輝男

(1988年11月30日受付)

I.内容要旨
急性虚血肢に血流を再開すると,虚血時よりも一層組織障害が顕著となり,また腎,心,肝,肺などの臓器障害を引き起こすことがあり再灌流障害として知られているが,その発生機序に活性酸素による脂質過酸化反応の関与が示唆されることから以下の実験を行った.
雑種成犬20頭を,第1群:コントロール群(n=7),第2群:急性下肢虚血群(n=6),第3群:虚血後VE.(α-tocopherol)投与群(n=7)の3群に分け,経時的に下大静脈血を採取し,rhabdomyolysisの指標としてCPKを,活性酸素による組織障害の指標としてLPO(lipidperoxides)を測定した.
さらに下肢筋及び肝,腎での組織障害を検討するために別の雑種成犬13頭を,A群:コントロール群(n=5),B群:虚血後再灌流群(n=8)の2群に分け,m. gracilis(m. gr),m. gastrocnemius(m. ga),肝,及び腎の組織中のLPOを測定した.
血清中CPKは第2群で再灌流後著明に上昇し,18時間後には35,200±6,700mU/mlとなり,さらに36時間後にピーク値38,000±9,800mU/mlを示し,第1群に比して有意に高値であった(p<0.02).血清中LPOも第2群で再灌流後徐々に上昇し,18時間後にピーク値20.4±3.7nmol/mlとなり,第1群に比して有意に高値であった(p<0.03).m. grのLPOは有意差を認めなかったが,m. gaのLPOはB群で1.83±0.71nmol/mg proteinと有意に高値を示した(p<0.02).しかし,肝及び腎では各々若干高値を示すが,有意差はなかった.またV.E.を投与した第3群ではCPKピーク値1,060±290mU/ml,LPOピーク値9.2±2.0nmol/mlでともに第2群に比し有意に低値であった(CPK:P<0.02,LPO:p<0.04).
この結果から,再灌流障害の発生機序に活性酸素による脂質過酸化反応の関与が間接的に証明され,scavengerであるα-tocopherolがその予防に有効であることが示唆された.

キーワード
MNMS, 再灌流障害, 活性酸素, 脂質過酸化反応, 過酸化脂質

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