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日外会誌. 90(10): 1742-1751, 1989


原著

Chromogranin 陽性大腸癌の免疫組織学的ならびに臨床病理学的検討

関西医科大学 外科学教室(指導:山本政勝教授)

大石 明人

(1988年12月8日受付)

I.内容要旨
各種消化器癌に銀染色陽性分泌頼粒を含む内分泌細胞が存在することは既に知られており,銀染色陽性癌細胞の形態学的特徴や腫瘍組織内分布ならびに予後との相関性等に関する研究が行われてきた.
最近,副腎髄質のみならず全身の神経内分泌系細胞の分泌物貯留頼粒中にカテコラミンと共存する蛋白質であるChromogranin(以下Cg)が発見され,各種内分泌器官由来の腫瘍マーカーとしてのみならず,消化器に存在する内分泌細胞のマーカーとしてもその応用が期待されている.
今回,著者は抗Cg抗体を用いて212例の大腸癌組織を対象として,その陽性癌細胞について免疫組織学的ならびに臨床病理学的に検討を行なった.
Cg陽性大腸癌は,212例中71例(33.5%)であり,その中でも強陽性例は30例(14.2%)に認められた.しかも,強陽性例は陰性例と比較して占居部位ではRb(14/30,46.7%)(p<0.05),壁深達度ではs.a2以上の例(19/30,63.3%)に有意に多かった(p<0.05).しかし,Cg陽性例とn,ly,v,P,H,M,腫瘍最大径,Borrmann分類,stage分類,Dukes分類,組織型,治癒切除率等の諸因子との間には有意差は認められなかった.また,強陽性例は,陰性例に比し有意に生存率は低かった(Generalized-Wilcoxon法;p<0.009).
以上より,Cg染色が,大腸癌患者の予後を知る上での一助になり得る可能性が示唆された.

キーワード
大腸癌, Chromogranin, 消化管ホルモン, 消化管内分泌細胞

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