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日外会誌. 90(10): 1732-1741, 1989


原著

抗 CEA モノクローナル抗体を用いた大腸癌の画像診断

*) 名古屋大学 医学部第2外科
**) 名古屋大学 医学部放射線科
***) 愛知がんセンター 第3外科

村山 浩基*) , 渡辺 正*) , 坂本 純一***) , 田所 匡典**) , 高木 弘*) , 佐久間 貞行**)

(1988年11月18日受付)

I.内容要旨
画像診断にモノクローナル抗体を応用することは抗原抗体反応という特異的な反応を利用するため,癌の質的診断に有用と考えられる.
我々は,大腸癌の画像診断に応用するためCEAを免疫原として,モノクローナル抗体(CEA 102)を作製し,その血清学的特異性を混合血球吸着法および免疫組織学的方法により解析した.CEA 102は混合血球吸着法において大腸癌細胞15/19,肺癌細胞3/3,などと反応を示したが,胃癌,肝癌,脳腫瘍,悪性黒色腫および線維芽細胞などとは反応を示さなかった.また免疫組織学的検索では,大腸癌,胎児大腸と反応を示したが,大腸正常粘膜とは反応を示さなかった.さらに,胃癌,食道癌およびその正常粘膜,膵癌および正常膵組織などとは反応を示さず,CEA 102は大腸癌に特異性の高い性格を持つことが判明した.つぎに,大腸癌樹立細胞株SW 1083を皮下に移植後約1ヵ月経過したヌードマウスの腹腔内へ,クロラミンT法を用い125Iにて標識したCEA102を16.2μCi投与後5日目にFCR(Fuji Computed Radiography)を用いて描出したところ腫瘍部に一致した125Iの集積をみとめた.
以上より,CEA102を用いて大腸癌の画像診断が可能と考えられたため,76歳男性の上行結腸癌肝転移症例に対し,クロラミンT法を用いて131Iにて標識したCEA102を,0.8mCi点滴静注し,72時間後に東芝GCA501Sを用いて描出したところ,肝CT写真および術中に確認された肝右葉の転移巣に一致した131Iの集積を認めた.

キーワード
大腸癌, 画像診断, CEA, モノクローナル抗体


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