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日外会誌. 90(8): 1245-1250, 1989


原著

各種リンパ球より誘導した LAK 細胞の肺転移抑制効果に関する実験的研究
ー特に開腹侵襲に伴う肺転移促進防止を目的としてー

岐阜大学 医学部第2外科

五島 秀行 , 佐治 重豊 , 古田 智彦 , 種村 広巳 , 鷹尾 博司 , 木田 恒 , 高橋 治海

(1988年8月26日受付)

I.内容要旨
5週齢SD系雌ラットにエーテル吸入麻酔あるいは30分間の開腹処置を行い,1×106個のMRMT-1培養細胞を尾静脈より注入移植し,2週目に屠殺剖検後,肺転移程度を観察した上で,2.5×107個のLAK細胞を併用静注した場合の肺転移結節数におよぼす影響につき検索した.なお,LAK細胞は担癌1週目の領域リンパ節リンパ球(LN),胸腺細胞(TB)および脾細胞(SC)からR-IL21U/ml添加培地で4日間培養刺激して誘導した.
1)MRMT-1を尾静脈より注入移植すると多数の肺転移をきたすが,LAK細胞静脈内投与により転移結節数は減少した.
2)エーテル吸入麻酔後静注移植した場合,麻酔時間の長さに関連した転移結節数増加は観察されなかった.
3)30分間開腹処置後静注移植した場合,肺転移結節数は有意に増加したが,LAK細胞静注により有意に減少した.
4)30分間開腹処置後静注移植し,LAK細胞の静注とR-IL2(10U/匹)の4日間連続皮下投与を併用した場合,肺転移結節数はR-IL2非併用群に比べ何れも減少した.
5)これらの抗腫瘍効果はLAK細胞別では,LN-LAKが最も優れ,SC-LAKが最も劣っていた.
以上の結果,LAK細胞の術直後静脈内投与は手術侵襲に伴う転移促進防止の面から有効で,術後のadjuvant immunotherapyとして利用できる可能性が示唆された.またLAK細胞の誘導に用いるリンパ球sourceとしては領域リンパ節が最も優れていた.

キーワード
LAK細胞, 受動免疫療法, 肺転移, 手術侵襲, ラット実験腫瘍


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