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日外会誌. 90(8): 1186-1195, 1989


原著

フローサイトメトリーによる食道癌および大腸癌の DNA ploidy の解析
ー予後, 病理所見, 家族歴との関連についてー

旭川医科大学 第1外科

山崎 弘資

(1988年11月12日受付)

I.内容要旨
食道癌85例並びに大腸癌52例について摘出材料のパラフィンブロックを用いて,フローサイトメトリー法により腫瘍細胞の核DNA量を測定し,DNA ploidyと予後及び組織型,深達度,リンパ節転移度,Stageなどとの相関性について検討した.Hedleyらの方法に準じてパラフィンブロックから腫瘍細胞核を単離し,propidium iodideで蛍光染色後,EPICS-C flow cytometerで10,000個の細胞の核DNA量を測定した.同様の操作で分離した同一患者の転移のないリンパ節細胞核を外部標準として用いた.ハムスターの肝臓,脾臓を用いた固定条件の検討からリンパ節細胞核は外部標準として適当であると考えられた.DNA indexの分布は食道癌ではdiploidyからlow ploid aneuploidyにかけての一峰性の分布を示したのに対し,大腸癌はdiploidyからlow ploid aneuploidyを示す群とhigh ploid aneuploidyを示す群の二峰性の分布を示し,それぞれの腫瘍に特徴的なパターンが見られた.DNA ploidyと生存率との関係を見ると食道癌では深達度やリンパ節転移度の方が生存率に強く相関しており,食道癌全体ではDNA ploidyと予後には有意な相関は見られなかったが,癌が食道壁を越えて進展している群やリンパ節転移陽性の進行癌についてみるとhigh ploid aneuploidy群がdiploidy,low ploid aneuploidy群に比して有意に予後不良であった(p<0.01).一方,大腸癌ではaneuploidy群はdiploidy群に比して有意に予後不良で(p<0.05),しかもaneuploidyの程度が高いほど悪性の傾向が見られ,DNA ploidyは深達度やリンパ節転移度よりも強く予後と相関していた.食道癌,大腸癌ともDNA ploidyと組織型,深達度,リンパ節転移度,stage,一親等内の癌の家族歴の間に相関関係は認めず,DNA ploidyはこれらの予後因子とは独立した因子であると考えられた.

キーワード
フローサイトメトリー, DNA index, DNA ploidy, 食道癌, 大腸癌


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