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日外会誌. 90(8): 1180-1185, 1989


原著

食道癌術後高ビリルビン血症の成因について第2報
ー拡大リンパ節郭清術の及ぼす影響

大阪大学 医学部第2外科

辻仲 利政 , 城戸 良弘 , 小川 道雄 , 塩崎 均 , 上林 純一 , 村田 厚夫 , 森 武貞

(1988年11月7日受付)

I.内容要旨
食道癌拡大リンパ節郭清術30例(1986~1988.1)の術後高ビリルビン血症(PHB)の発生頻度は26例(87%),ビリルビン値(bil.)3.5mg/dl以上の高度黄疸例は23例(77%)と,拡大手術のなされていなかった1979~1985年におけるPHBの発生率59%および高度黄疸例の占める頻度29%に比し有意に高かった.PHBを高度黄疸例(A群:bil.≧3.5)と軽度黄疸例(B:2≦bil.<3.5)に分けると,A,B群はともに有意に術前栄養指数がA群50±5(Mean±SD),B群47±9(Mean±SD),とビリルビン正常群(bil.<2)57±5(Mean±SD)に比較して低く,人工呼吸期間がA群7±4.6(Mean±SD)日,B群9±1.7(Mean±SD)日,と正常群3±1.2(Mean±SD)日に比較し長かった.感染症に起因する術後合併症は26例中8例(31%)と必ずしも多くなかったが,A群では術後6日目以降γGTP,ALPの上昇と白血球増多症がみられた.胆摘術および外胆のう瘻造設術は,PHBの発生に影響を与えなかった.術後血中エンドトキシン値は測定した9例中6例に陽性であり,うち5例にPHBを認め,PHB発生に関与している可能性が示唆された.
PHB症例は胆汁うっ滞,白血球増多,エンドトキシン陽性を呈しながら,感染巣の明らかでない例が多く,そのため過大な手術侵襲下に生じる感染巣の同定し得ない感染症が原因となって,PHBが発生する可能性が考えられた.

キーワード
高ビリルビン血症, 食道癌拡大リンパ節郭清, エンドトキシン, 手術侵襲


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