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日外会誌. 90(8): 1170-1179, 1989


原著

食道癌術後の脂質代謝の検討

防衛医科大学 第2外科

島 伸吾 , 米川 甫 , 吉住 豊 , 杉浦 芳章 , 後藤 正幸 , 森崎 善久 , 田中 勧

(1988年9月21日受付)

I.内容要旨
食道癌の術後に血中総コレステロールの低下を認めるのでその原因を追求するため,食道癌切除38例を非合併症群(A群)26例と合併症発生群(B群)12例に分け,さらに対照として胃癌切除例(C群)15例について,術前から術後4週間の脂質代謝をコレステロールを中心に比較検討した.検討項目はコレステロール,トリグリセライド,リン脂質,遊離脂肪酸,リボ蛋白の割合,アポ蛋白,HDLコレステロールなどである.結果は,1)主に肝で合成される脂質および蛋白は術後に著しい減少を示した.その程度は胃癌が少なく,食道癌では2週目まではA,B群は同じ変化を示すが,その後合併症群で回復が遅れた.2)術後に脂質が低下する理由として急性肝炎に類似する脂質合成能低下と手術侵襲による異常消費が加わったものと考えられる.3)合併症群では術前値ですでに胃癌や経過良好食道癌患者に比し有意に低値を示したものがあった.それは総コレステロール,HDLコレステロール,Apo A1,Apo A11,アルブミンで,Apo C111,Apo B,コリンエステラーゼは低い傾向を示した.
結論:食道癌の術後に急性肝炎時にみられる脂質およびアポ蛋白の合成低下が認められ,これは合併症発生例では術前よりその傾向があり,特に合併症発生後は著しくなる.

キーワード
食道癌術後脂質代謝, 術後合併症, 術後アポ蛋白の変動, 術後低コレステロール血症


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