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書誌情報]
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日外会誌. 90(8): 1154-1160, 1989
原著
敗血症性多臓器不全における血漿アミノ酸の変動
I.内容要旨敗血症性多臓器不全(SMOF)の進展における血漿アミノ酸の動きと,分枝鎖アミノ酸富有アミノ酸液(BCAA richアミノ酸液)投与の意義について,臨床的検討を行ったものである.対象症例は,主として消化器術後および制癌剤投与後にSMOFを来し,ICUに収容され敗血症性ショックに陥り死亡した13名である.平均年齢は56歳(30~74歳),平均滞在期間は21日(6~52日)であった.血漿アミノ酸および血清酵素の値は,ICU入室時(I期),重症感染期(II期),末期(III期)に分け比較された.BCAA richアミノ酸液投与例については,死亡当日より逆算して前・中・後期に分け,通常アミノ酸液投与例のものと比較検討された.
1)血漿アミノ酸の変動:a)血漿総アミノ酸値(TAA)は,I期2,963n・mol/ml,II期6,666n・mol/ml,III期19,480n・mol/mlと著増をみた.I期の値は当科正常値よりやや低かった.b)分枝鎖・芳香族アミノ酸比(Fischer比:B/A値)は,I期1.44,II期1.03,III期1.05と低下を示し,当科正常値2.40よりいずれも低かった.
c)アミノ酸分画の絶対値は,I期に比べII期では主要な25種中13種が,II期では23種で増加をみた.d)アミノ酸分画の割合は,I期に比しII期では2種が低下を,III期では6種が低下,3種で増加を見た.e)TAAと血清酵素の間には,LDH 2,000単位,GOT,GPT 200単位以上でのみ相関関係がみられた.2)BCAA richアミノ酸液投与によりB/A値は,通常アミノ酸液投与例に比し,前・中・後期共に高値を示したが,病態の進展に対する影響については明らかにし得なかった.
SMOFの進行せる時期においては,B/A値は低下をみたが,TAAの異常高値から肝における蛋白合成,糖利用共に低下していることを示唆していた.この時期におけるBCAAの投与がいかなる意義を有するかについては,今後の検討を必要としている.
キーワード
敗血症性多臓器不全, 血漿アミノ酸値, 分枝鎖アミノ酸輸液, フイッシャー比
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