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日外会誌. 90(7): 980-987, 1989


原著

Prostaglandin (PG) D2の抗腫瘍効果に関する実験的研究

横浜市立大学 医学部第2外科学教室(指導:土屋周二教授)

江原 博

(1988年8月24日受付)

I.内容要旨
Prostaglandin(PG)の中で脳や脊髄に多く存在し,血小板凝集阻止作用,細胞増殖抑制作用を持つと言われるPGD2について,培養腫瘍細胞とマウス移植腫瘍を用いて,その抗腫瘍作用およびその機序について検討した.
1)Sarcoma-180(S-180),Ehrlich腹水癌,吉田肉腫およびKATO-III(ヒト胃癌)は,PGD2100μg/mlの濃度の培養液で生細胞率の著しい低下を示した.またKATO-IIIは他の3種に比し抵抗性が高かった.
2)ddYマウス腹腔内にS-180(2×105個)を移植し,PGD2 40μgを連続10日間腹腔内に投与すると,腹水貯留の抑制と生存日数の延長が認められた.これに反しPGD2尾静脈内投与の効果は少なかった.
3)培養KATO-IIIにフォルスコリンを添加しcyclicAMPの産生を増やしたが,PGD2によるKATO-IIIの増殖抑制,生細胞率の低下には影響なかった.
4)DNAヒストグラムをみると,PGD2添加によりS-180では著しいG2+M期の蓄積とS期の増加がみられ,KATO-IIIでは中等度のS期の増加が認められた.
以上から,PGD2には直接的な強い腫瘍細胞増殖抑制作用が認められ,その機序はreceptor-cAMP系を介する作用よりも,DNA合成阻害作用によるものと考えられた.またPGD2のDNA合成阻害作用には,各種瘍株により量的,質的な特徴があることが示された.

キーワード
Prostaglandin (PG) D2, 抗腫瘍作用, Sarcoma-180, KATO-III, DNA ヒストグラム


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