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日外会誌. 90(7): 988-998, 1989


原著

補体 C3濃縮分画の投与による外科的低オプソニン血症の治療についての基礎的研究

東京大学 医学部第1外科

井上 暁

(1988年8月24日受付)

I.内容要旨
血漿中のオプソニン蛋白である補体C3を高濃度に含有する分画(C3RF)を健常血漿から抽出し,C3RF投与がオプソニン活性の低下した状態における感染防御能改善に有効であるかどうかを検討した.その結果,1)オプソニン活性をHirsch-Strauss法変法によるオプソニン指数(OI)で表すと,56℃30分間加熱によりモルモット血漿のOIはほぼ0となるが,70μlのモルモット加熱血漿に10pt lのC3RFをin vitroにおいて添加すると,OIは0.74±0.18と著しく増加した.2)モルモットにコブラ蛇毒成分(CVF)20単位を注射するとOIはほぼ0となるが,この時点でC3RFを1ml筋注投与すると2時間後にOIは0.94±0.07と回復した.3)大腸菌075株1×109CFUをモルモット腹腔内に注入して実験的腹膜炎を作成すると,CVF処理した低オプソニン化動物の24時間生存率は0/13と,対照群の7/13に対して有意に低下したが,C3RFを投与してオプソニン活性を回復させた動物では8/13と有意に改善した.また臨床分離菌株2種を腹腔内に注入した場合も同様の結果を得た.4)肝硬変や敗血症などでOI低値(平均0.28±0.05)を示す患者血漿にC3RF,新鮮凍結血漿,56℃30分加熱血漿をそれぞれin vitroにおいて混合しOIを測定すると,C3RFの投与は新鮮凍結血漿よりも少量で投与量依存性にOIを上昇せしめ,患者血漿40μ1に対しC3RF 2.5μl(容量比6.25%)の投与でOIは0.83±0.09に上昇した.一方,加熱非働化血漿の投与ではOIは不変であった.以上より,C3RFは臨床的にも低オプソニン血症の治療に応用しうる可能性が示唆された.

キーワード
外科感染症, オプソニン活性, 補体 C3


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