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日外会誌. 90(6): 928-932, 1989


原著

開心術における急性 GVHD 様症候群の発生要因の検討

久留米大学 医学部第2外科

久富 光一 , 磯村 正 , 島田 昇二郎 , 平野 顕夫 , 安藤 文彦 , 大石 喜六

(1988年7月12日受付)

I.内容要旨
今回我々は開心術後の細胞性免疫能を測定し,他家血輸血によると思われる急性GVHD(graft versus host disease)様症例,さらにその発生要因に言及するため,対象症例を年齢により分類し比較検討した.対象症例は他家血輸血を必要とした開心術症例73例(60歳未満:55例,60歳以上:18例)で,輸血量平均2,368cc,平均年齢52.8歳であった.
開心術後の末梢血OKT3+(pan T)およびOKT4+(helper/inducer)細胞率,さらにリンパ球幼若化反応,IL-2産生能は術後1日目に有意に低下したが,術後7日目から14日目には術前値に回復した.一方GVHD様症例では,術後経過とともにOKT4+細胞率の低下,OKT8+(suppressor/cytotoxic)細胞率の上昇,さらにリンパ球幼若化反応及びIL-2産生能の低下を認め,術後の細胞性免疫能の推移は,対象症例と比較しても極めて特異的で,これはまた骨髄移植後に発生する急性GVHDと類似した推移を呈していた.さらに高齢者では術前からIL-2産生能およびリンパ球幼若化反応は低下しており,GVHD発生の観点からも,高齢者における術後の他家血使用は注意を要するものと思われた.

キーワード
GVHD, 開心術後, IL-2産生能, 細胞性免疫能, 他家血輸血

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