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日外会誌. 90(6): 914-919, 1989


原著

乳癌組織におけるハイドロキシプロリン量の検討

東京女子医科大学付属第2病院 外科(指導:梶原哲郎教授)

飯田 富雄

(1988年4月27日受付)

I.内容要旨
乳癌組織におけるハイドロキシプロリン量を測定し臨床病理学的に検討することにより,乳癌組織におけるコラーゲンのかかわりについて解明を試みた.
対象は原発性乳癌40例で,乳房切断後,ただちに癌組織,非癌組織(正常乳腺,乳腺症)を摘出し,組織内ハイドロキシプロリン量を測定した.測定結果を臨床病理学的因子,年齢,レセプター,組織CEAとの関係から検討した.
癌組織のハイドロキシプロリン量は正常乳腺よりは多く,乳腺症より少なかった.組織型では,硬癌がもっとも多く,乳頭腺管癌,充実腺管癌の順で,硬癌と充実腺管癌との間に有意差が認められた.リンパ節転移との関係では,陽性例と陰性例の間に有意差があり,ハイドロキシプロリン量の多いものにリンパ節転移のあるものが多かった.腫瘍径には関連がみられなかったが,リンパ節転移の結果を反映して,病期別では,stage II~IVはstage Iに比べ,多い傾向がみられた.脈管侵襲との関係では,軽度ではあるが陽性例が高値であった.年齢との関係では,負の相関が有意差をもってみられ,年齢が若い乳癌ほどハイドロキシプロリン量が多かった.レセプター,組織CEAとは関連はみられなかった.
浸潤型の発育形式を示す硬癌で,ハイドロキシプロリン量がもっとも多かったことより,コラーゲンが癌の進展になんらかの関連があることが示唆された.また,ハイドロキシプロリン量がリンパ節転移陽性例や若年者ほど多かったことは,コラーゲン量と悪性度との関連が示唆される興味深い結果であると考えられた.

キーワード
乳癌, ハイドロキシプロリン, コラーゲン


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