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日外会誌. 90(6): 886-893, 1989


原著

肝炎自然発生 LEC (Long Evans Cinnamon) ラットにおける複合免疫不全の合併

1) 北海道大学 医学部癌研病理
2) 北海道大学 医学部第1外科
3) 札幌医科大学 医学部病理

波江野 力1)2) , 武市 紀年1) , 伝法 公麿3) , 森 道夫3) , 内野 純一2) , 小林 博1)

(1988年3月2日受付)

I.内容要旨
急性肝炎および劇症肝炎を自然発症するLECラットについて,その発症原因検索の一環としてLEA(Long Evans Agouti)ラットをコントロールとして免疫病理学的に検索した.
6週齢のLECおよびLEAラットの脾臓および胸腺の湿重量の比較では,LECラットがLEAラットより有意に低値であり,さらに肝臓の湿重量の比較でも有意に低値であった.
LECラットの血中IgG levelは生理学的免疫不全状態を脱却しうることなく低値を持続し,抗体産生能も低下していた.一方,血中IgM levelは相対的に高値傾向を持続したが,抗体産生能は低下しており,未熟Bcellのmaturationが不十分と考えられた.PHAおよびConAに対する脾細胞の幼若化反応はLECラットで有意に低下しており,T cellの機能低下も認められた.
腹腔マクロファージの癌細胞増殖抑制能はLECラットで著明に上昇しており,NK活性は両系ラット間で差が見られなかった.
以上より,肝炎自然発生LECラットの免疫学的検索で特異的免疫能であるTcellおよびBcellの複合免疫不全と,それを代償するかのように非特異的細胞性免疫能(特にマクロファージ)の亢進が認められた.
これらの特異的・非特異的免疫担当細胞の異常が,LECラットにおける肝炎発症に何らかの関連を有しているものと推測される.

キーワード
LEC ラット, 自然発症肝炎, 体液性免疫, 細胞性免疫, 複合免疫不全


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