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日外会誌. 90(6): 826-836, 1989


原著

十二指腸潰瘍患者の胃酸分泌能からみた幽門洞内分泌機能に関する研究

新潟大学 医学部第1外科

三浦 宏二

(1988年5月18日受付)

I.内容要旨
幽門洞内分泌機能と壁細胞の酸分泌能の関連を明かにするために,十二指腸潰瘍症例18例(以下DU群),選択的近位迷走神経切離後再発例4例(以下SPV再発群)および胃体部早期胃癌症例6例(以下対照群)の切除胃を用いて酵素抗体法より幽門洞GおよびD細胞数を測定し,テトラガストリン刺激酸分泌(以下Tg-MAO,Tg-PAO),アドレナリン刺激酸分泌(以下Adr-PAO)と血中ガストリン反応(以下Adr-PGO)との関連を検討した.
高酸群8例(DU群:Tg-MAO≧20)とSPV再発群4例のG細胞数は細胞密度,細胞総数ともに正酸群10例(DU群:Tg-MAO<20)および対照群よりも有意に高値であったが,D細胞数は細胞密度,細胞総数ともに4群間に差を認めなかった.DU群とSPV再発群において,Tg-PAOとG細胞総数に有意の正の相関を認めた.アドレナリン刺激を行ったDU群9例の検討では,G細胞総数とAdr-PGOおよびAdr-PAO,Adr-PGOとAdr-PAOおよびTg-PAO,Tg-PAOとAdr-PAOに有意の正の相関を認めた.またAdr-PAO/Tg-PAOとG細胞数およびAdr-PGOに有意の正の相関を認め,(Tg-PAO)一(Adr-PAO)とG細胞総数に有意の負の相関を認めた.
幽門洞G細胞数の増加は内因性ガストリンを介して壁細胞のガストリン性酸分泌能の亢進に大きな影響を与えており,十二指腸潰瘍の高酸分泌およびSPV後の潰瘍再発の大きな原因になっていると考えられる.また,Tg-PAO,Adr-PAOは幽門洞ガストリン分泌能を反映し,両者が高くかつ接近している症例ほどその幽門洞ガストリン分泌能が高い可能性が大きいと考えられる.

キーワード
十二指腸潰瘍, 幽門洞内分泌機能, ガストリン分泌細胞


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