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日外会誌. 90(5): 780-785, 1989


原著

ER 陽性乳癌の増殖に及ぼすホルモンの影響について

*) 金沢大学医学部付属病院 手術部
**) 金沢大学医学部付属病院 第2外科

野口 昌邦*) , 田尻 潔**) , 熊木 健雄**) , 谷屋 隆雄**) , 宮崎 逸夫**)

(1988年7月21日受付)

I.内容要旨
ヌードマウスに移植したヒト乳癌株MCF-7腫瘍を用いて,ER陽性乳癌の増殖に与える各種ホルモンの影響を腫瘍重量,Dextran-coated charcoal(DCC)法,ER-immunocytochemical assay(ER-ICA)および著者らの考案したER-immunocytochemically stained 3H-thymidine autoradiographyにより検討し,次の結果を得た.
(1)推定腫瘍重量の推移および実測腫瘍重量から見た腫瘍増殖はTamoxifen(TAM),Medroxy-progesterone acetate(MPA)で抑制される傾向があり,17β-estradiol dipropionate(E2)で有意に促進された(p<0.05).
(2)DCC法によるEstrogen receptor(ER)値(fmol/mg p)はTAM群12.3±3.9,MPA群118.4±49.0およびE2群9.7±2.0で無処置群146.8±3.3に比較して有意に低下した(p<0.05).
(3)ER-ICAで検討すると,腫瘍組織内のER陽性細胞とER陰性細胞はモザイク状に混在して認められ,そのER陽性細胞率は無処置群68.0±2.6%に比較してTAM群54.7±3.7%およびMPA群51.1±1.2%で有意に低下し,またE2群82.8±4.6で有意に増加した(p<0.05).
(4)ER-immunocytochemically stained 3H-thymidine autoradiographyでER陽性細胞とER陰性細胞の3H・チミジン標識指数を別々に算出した結果,ER陽性細胞の標識指数はTAM群7.1±1.8%およびMPA群10.0±2.0%で無処置群13.5±1.4%に比較して有意に低下した(p<0.05).またER陰性細胞の標識指数もTAM群7.9±1.4%およびMPA群10.9±2.1%で無処置群16.1±2.3%に比較して有意に低下した(p<0.05).しかし,E2群ではER陽性細胞のみならずER陰性細胞の標識指数もそれぞれ17.0±3.3%,20.2±3.4%と無処置群のそれらに比較して有意に増加した(p<0.05).
従って,各種のホルモンはER陽性乳癌のER陽性細胞のみならずER陰性細胞の増殖にも影響を及ぼしていると考えられた.

キーワード
乳癌, ホルモン療法, Estrogen receptor

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