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日外会誌. 90(5): 745-752, 1989


原著

ハムスター実験膵癌における肝転移抑制に関する研究

東北大学 医学部第1外科

加藤 宜誠 , 小針 雅男 , 松野 正紀 , 佐藤 寿雄

(1989年11月16日受付)

I.内容要旨
膵癌切除後の遠隔成績向上のためには術後早期の肝転移防止対策が必要である.術中操作により門脈内へ流入する癌細胞の肝転移形成を防止する目的で;ヒト膵癌培養細胞,ハムスター膵癌肝転移モデルを利用して,抗血小板剤による肝転移抑制効果について検討した.
ヒト膵癌培養細胞6株中5株に血小板凝集能が認められ,血小板凝集に必要な細胞数は0.5×107/mlでありPRP(platelet rich plasma)0.45mlに対しては約2.5×105個であった.0~10分のlag timeに続き解離傾向のない二次凝集が大部分を占めた.5種の細胞において細胞濃度に比例して,Ca再加時間の短縮とprocoagulant活性を認め,全てにトロンボプラスチソ様活性が認められた.
ハムスター膵癌細胞HPK-1にはin vitro,in vivo両方で血小板凝集活性が認められた.
HPK-1の血小板凝集能は抗血小板作用をもつプロスタグランジン(PG)により抑制された.
ハムスター膵癌肝転移モデルにおいて,抗血小板作用を有するPGE1,PGI2では明らかな転移抑制効果が認められ,PGI2100μgで82%,PGE1100μgで,50%の肝転移抑制効果が得られた.また,これらの成績はexo vivoの血小板凝集の程度およびin vivoにおける血小板減少の程度とほぼ一致していた.また,対照群,PG併用群ともに肺,腎,脾臓に転移結節は認めず,PG併用により肝通過後の転移が助長されることはなかった.
プロスタグランジンを用いた抗血小板療法は今後膵癌の肝転移を防止する有効な治療法となることが期待される.

キーワード
ハムスター膵癌, プロスタグランジン, 血小板凝集能, 肝転移抑制


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