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日外会誌. 90(4): 605-614, 1989


原著

閉塞性動脈硬化症における Prostanoids の局所的変動

東京医科大学 外科学第2講座(主任:古川欽一教授)

土田 博光

(1988年3月8日受付)

I.内容要旨
閉塞性動脈硬化症(ASO)におけるthromboxane A2(TXA2)及びprostacyclin(PGI2)の変動をより局所的に捉えることを目的とし,下肢にのみ虚血症状を有するASO患者27例を対象として,肘静脈血,患肢大腿動静脈血において,これらの代謝産物であるthromboxane B2(TXB2),6-keto-prostaglandin F(6-Keto-PGF)をRIA法により測定,健康対照群10例と比較検討し,以下の結果を得た.
1)肘静脈血においては,ASO患者と健康対照群でこれらに有意差を認めなかったが,ASO患者の患肢大腿静脈血においては健康対照群及びASO患者自身の他の部位に比し,TXB2及びTXB2/6-Keto-PGFの上昇傾向が認められた.
2)このASO患者患肢大腿静脈血におけるTXB2,TXB2/6-Keto-PGFの上昇は,femoropopliteal groupでは明瞭に観察されたのに対し,aorto-iliac+combined groupでは大腿動脈血で既にTXB2が高値を示し,大腿動静脈血間較差は認められなかった.
3)これらprostanoidsの局所的変動に,Fontaine I+II度群とFontaine III+IV度群間で有意な違いは認められなかった.
4)腹部大動脈から総大腿動脈までの動脈撮影所見の重症なものほど大腿動脈血TXB2値は高値をとり,また末梢run-offの不良なものほど下肢におけるTXB2産生が多い傾向を示した.
以上の結果から,ASO患者の虚血肢においては局所的なTXA2,PGI2のimbalanceが存在すること,狭窄部末梢の大腿動脈で既にTXA2の上昇が起こっていること,及び局所の血漿TXB2値はASO患者における血管障害の重症度を反映することが示唆された.

キーワード
Arteriosclerosis obliterans, Thromboxane A2, Thromboxane B2, Prostaglandin I2, 6-Keto-prostaglandin F


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