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日外会誌. 90(4): 586-597, 1989


原著

Trypsin inhibitor の膵栄養効果に対する迷走神経切断及び腹部交感神経節切除の影響

京都大学 医学部第1外科
*) 山口大学 医学部第2外科
**) 国立療養所南京都病院 外科

安芸 敏彦 , 馬場 信雄 , 戸部 隆吉 , 鈴木 敞*) , 西村 一郎**) , 蔡 元奎**)

(1988年5月10日受付)

I.内容要旨
合成Trypsin inhibitor(FOY-305)経口投与による膵栄養効果(Pancreatic trophic effect)が迷走神経切断下及び腹部交感神経節切除下において,いかなる影響を受けるかという点について,ラット正常膵並びにラット85%大量膵切除後残膵に対して検討した.
正常膵において合成Trypsin inhibitorの経口投与は,膵重量,膵組織内DNA量,膵組織内RNA量,膵組織内蛋白量,単位DNA量当たりの膵重量,単位DNA量当たりのRNA量,単位DNA量当たりの蛋白量はすべて対照群に比して有意に増加し,膵細胞の増生(hyperplasia)と肥大(hypertrophy)に起因する膵栄養効果を発現した.そして,迷走神経切断下及び腹部交感神経節切除下においても,この合成Trypsin inhibitorの膵栄養効果は減弱することなく発現した.
また,85%膵大量切除後残膵においても合成Trypsin inhibitorの経口投与は,膵細胞の増生によると考えられる膵栄養効果を惹起し,迷走神経切断下及び腹部交威神経節切除下においても,この膵栄養効果は減弱することなく発現した.
これにより,合成Trypsin inhibitorの経口投与が膵大量切除後残膵の機能回復に神経遮断下においても役立つ可能性が示された.

キーワード
合成 Trypsin inhibitor, 膵栄養効果, 膵大量切除, 迷走神経切断, 交感神経節切除

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