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日外会誌. 90(4): 580-585, 1989


原著

ラットを用いた重症感染症下における外因性インスリンのグルコース及び脂肪代謝に与える影響に関する実験的研究

三重大学 医学部第2外科(指導:鈴木宏志教授)

喜畑 雅文

(1988年3月3日受付)

I.内容要旨
腹膜炎ラットを用いて,グルコース主体の経静脈栄養を行ないながらインスリンを投与し,これがグルコースおよび脂肪酸の酸化におよぼす影響を,one shotで静注した標識グルコースならびに標識リノール酸の呼気CO2累積回収率によって検討した.インスリンを投与しない場合の腹膜炎ラットにおける標識グルコースおよびリノール酸の6時間後累積回収率は各々 62.38±13.00%,24.72±3.06%で,対照群の78.22±6.22%,34.60±10.56%に比して有意に低下していた.インスリン投与によって,標識グルコースの回収率は対照群で,78.22±6.22%から86.16±4.23%と有意に増加したが,腹膜炎群では血糖値は225±38mg/dlから143±22mg/dlへと有意に低下したにもかかわらず,回収率には有意な変化を認めなかった.また,インスリン投与による標識リノール酸の回収率は対照群および腹膜炎群とも,インスリンを投与しない場合と有意な変化を認めなかった.
すなわち,盲腸結紮に穿刺を加えた腹膜炎ラットではグルコースおよびリノール酸の酸化はともに抑制され,腹膜炎下でのインスリン投与によって血糖値が低下するのは,グルコースの酸化を反映するのではないことが知られた.

キーワード
腹膜炎, インスリン抵抗性, 経静脈栄養

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