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日外会誌. 90(4): 573-579, 1989


原著

肝炎自然発生LEC(Long Evans Cinnamon)ラットの樹立

1) 北海道大学 医学部癌研病理
2) 北海道大学 医学部第1外科
3) 札幌医科大学 医学部病理
4) 北海道大学 理学部動染研

波江野 力1)2) , 武市 紀年1) , 伝法 公磨3) , 森 道夫3) , 内野 純一2) , 佐々木 本道4) , 小林 博1)

(1988年1月18日受付)

I.内容要旨
北海道大学実験生物センターにおいて,非近交系のLE(Long Evans)ラットより毛色の違いによって2系のラット(LEC:Long Evans Cinnamon,LEA:Long Evans Agouti)が分離された。各系ごとに弟妹交配で継代したところ,24世代以降のLECラットに限って生後約4ヵ月頃にその80~90%に急性肝炎を自然発症した.その主徴は突然発現する黄疸であり,そのうち約80%はヒト劇症型肝炎類似の臨床経過および病理組織像を呈して2週以内に死亡した.
急性肝炎発症時のLECラットでは,尿中ビリルビン強陽性,血中ビリルピソ値の著増および血清GOT,GPT値の異常高値(GOT優位)が認められた.組織病理像でspotty necroseを認め巨大異型核を有する肝細胞が出現し,fulminant typeでは肝小葉は中心性壊死あるいは亜広範性凝固壊死を示し,炎症性細胞浸潤も認められた.
肝炎発症前のLECラットの血清albumin値はLEAラットに比して低値であった.
最も特徴的なことはセルロース・アセテート膜電気泳動法によるγ一globulin分画の測定不可が6週齢および12週齢のLECラットに認められたことであり,LECラットの肝病変の病因を検索する鍵になるものと思われた.

キーワード
LEC ラット, 急性肝炎, 劇症型肝炎, 肝癌, 低γ-globulin 血症


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