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日外会誌. 90(4): 538-545, 1989


原著

CCl4肝障害時におけるヌードマウス可移植ヒト癌に対する各種フッ化ピリミジン系制癌剤の抗腫瘍効果

京都大学 医学部第1外科 腫瘍外科学研究室

仁尾 義則 , 今井 史郎 , 白石 隆祐 , 大垣 和久 , 戸部 隆吉

(1988年4月25日受付)

I.内容要旨
ヒト癌を移植したCCl4肝障害ヌードマウスを作成し,フッ化ピリミジン系制癌剤の効果に対する肝障害の影響を検討した.
BALB/cヌードマウスに大腸癌株(CC-ZK)と胃癌株(GC-SF)を移植後,10%CCI41ml/kg,週2回,計8週皮下投与し,担癌肝障害ヌードマウスを作成した.移植した腫瘍が5~7mm大に増大してから5-FU(15mg/kg),FT-207(100mg/kg),UFT(FT-207:20mg/kg+Uracil:44.8mg/kg)を連日28日間経口投与し,平均腫瘍増殖抑制率(MGIR)をCCI4非投与群と比較した.
その結果,CC-ZKにおいてはCCl4非投与群のMGIRは5-FU群18.3%,FT-207群33.1%,UFT群54.2%,またCCl4投与群のMGIRは5-FU群14.0%,FT-207群50.0%,UFT群59.5%であり,CCI4による影響はFT-207群およびUFT群ではみられなかったのに対し5-FU群の腫瘍抑制効果は低下した.GC-SFにおいてはCCI4非投与群のMGIRは5-FU群39.0%,FT-207群63.8%,UFT群48.0%,またCCI4投与群のMGIRは5-FU群12.6%,FT-207群53.6%,UFT群50.0%であり,5-FU群のMGIRはCCI4により低下したのに対し,FT-207群およびUFT群ではCCI4による影響を受けなかった.
これらのことから5-FUの抗腫瘍効果は肝障害により低下するが,FT-207やUFTは肝障害時にも抗腫瘍性の低下はみられず,肝障害をともなう消化器癌の治療にも有用であると考えられた.

キーワード
ヌードマウス, 肝障害, 四塩化炭素, 移植ヒト癌, 5-FU, UFT

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