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日外会誌. 90(4): 524-531, 1989


原著

クロ一ン病に併存する十二指腸潰瘍病変の病態と治療方針

神戸大学 医学部第1外科 
*) 神戸大学 医学部第2内科

伊藤 あつ子 , 裏川 公章 , 橋本 可成 , 市原 隆夫 , 長畑 洋司 , 斎藤 洋一 , 佐伯 進*)

(1988年5月17日受付)

I.内容要旨
クロ一ン病22例のうちULII以上の十二指腸潰瘍病変の併存を認めた8例につきその病態および治療方針を中心に検討を加えた.8例の十二指腸潰瘍病変は発見当初いずれも形態学的には消化性十二指腸潰瘍と鑑別困難であったが,経過観察期間中に1例は高度の浮腫状粘膜を,4例は頼粒状粘膜を,1例は縦走潰瘍および敷石状外観を呈するようになり,すなわち8例中6例は消化性十二指腸潰瘍とは異なった病像を示した.胃液検査(ペンタガストリン6μg/kg刺激)はBasal acid output(以下BAO)が6.6±4.0mEq/L,Maximal acid output(以下MAO)が21.2±3.4mEq/Lで消化性十二指腸潰瘍に匹敵する高酸を示した.保存的治療は抗潰瘍剤単独治療では有効率40.0%,抗潰瘍剤,抗クローン病剤併用治療では有効率57.1%であった.手術治療は2例に広範囲胃切除術が施行されておりいずれも十二指腸潰瘍病変の再発を認めていない.以上の結果よりクローン病に併存する十二指腸潰瘍病変は高酸を一つの要因に発生し,クローン病という原疾患に修飾を受けた病像を呈していることが示唆され,治療にあたっては原疾患の治療に加え制酸剤の投与が試みられるべきで,狭窄などの手術必要例には減酸効果を加味した手術術式が考慮される必要があると思われた.

キーワード
クローン病, 十二指腸クローン病, 消化性十二指腸潰瘍, 胃液酸度


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