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日外会誌. 90(3): 415-422, 1989


原著

膵頭部癌の発生原基別にみた進展形式の相違

山梨医科大学 第1外科
*) 山梨医科大学 第1病理

藤井 秀樹 , 松本 由朗 , 須田 耕一*) , 青山 英久 , 山本 正之 , 菅原 克彦

(1988年5月27日受付)

I.内容要旨
膵頭部癌切除20例のうち,肉眼的腫瘍径2cm以下のT1膵頭部癌8例と2~4cmのT2膵頭部癌7例の15例を対象として, これらの占拠部位を発生学的立場から2群に分類し,両群間での癌の進展形式の相違を病理組織学的に検討した.占拠部位は膵頭部腹腔側(anterior)と脊椎側(posterior)に分類し,それぞれの部位の同定は抗pancreaticpolypeptide(pp)免疫染色によった.その結果, posteriorの癌ではT1は5例, T2は2例の7例であり,anteriorではT1は3例,T2は5例の8例であった.posteriorの癌は一般に膵後方組織浸潤が優位で,T1の5例中4例,T2の2例中2例に認められ,主膵管内進展はT1には無く,T2では1例に疑われたのみであった.一方, anteriorの癌は主膵管内進展が優位でT1,T2の全例に認められたが,膵後方組織浸潤はT1で3例中1例に,T2でも5例中3例に軽度に認められたにすぎなかった.したがって膵頭部癌の治療に際して,癌を比較的小さな時期に発見し,posteriorからの癌であれば,膵後方組織を含めた拡大郭清が,またanteriorからの癌であれば,膵臓の大量切除に重点をおいた術式が妥当であると考えられた.

キーワード
pancreatic polypeptide 産生細胞, 膵頭部癌の進展形式, 腹側膵原基, 背側膵原基


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