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日外会誌. 90(2): 285-290, 1989


原著

開心術後心機能, 呼吸機能の回復過程からみた血漿膠原浸透圧測定の意義

山口大学 医学部第1外科

浜野 公一 , 近江 三喜男 , 松本 直晃 , 西 健太郎 , 郷良 秀典 , 森 文樹 , 江里 健輔

(1988年3月15日受付)

I.内容要旨
開心術33症例に対し,術前,体外循環中及び体外循環後48時間まで経時的に血漿膠質浸透圧(Colloid Oncotic Pressure:COP)を測定するとともに,心係数(CI),肺動脈楔入圧(PCWP),肺胞気一動脈血酸素分圧較差(A-a)DO2を測定した.体外循環終了後3時間と24時間のCOP値をもとに,体外循環終了後3時間から正常値に復していたものを早期正常群(n=23),24時間では正常に復していたものの3時間値が正常に復さなかったものを晩期正常群(n=4),24時間後も正常に復さなかった異常群(n=6)に分けた.これらの3群について開心術後のCOP値の変動と心機能,呼吸機能の回復の関連について検討した.
心係数は,早期正常群では,術後早期から3.86~4.36l/min/m2と安定した値を維持したのに比し,異常群では体外循環終了後2.17~2.92l/min/m2と有意の低値に留まった.晩期正常群では,体外循環終了後3時間値,6時間値がそれぞれ2.45,2.99l/min/m2と低値であったがその後増加した.(A-a)DO2は術前3群ともに正常値を示していたが,異常群では,体外循環終了後1時間より開大し,以後この開大が持続した.しかし,早期及び晩期正常群では,開大はなく経過した.
体外循環終了24時間後でもCOPが低値で正常に復さなかった異常群では心機能,呼吸機能ともに障害されていた.これに対し,COPが体外循環終了3時間後では正常でないものの,24時間後には正常となった晩期正常群では心機能のみ軽度障害され,呼吸機能障害はなかった.よって,COPは開心術後管理の指標として意義あるものと考えられた.

キーワード
血漿膠質浸透圧, 開心術, 心係数, (A-a) DO2, COP-PCWP 較差


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