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日外会誌. 90(2): 291-297, 1989


原著

冠動脈収縮に及ぼす外液の電解質組成と温度の影響

名古屋大学 医学部胸部外科学教室(主任:阿部稔雄教授)

吉田 勝彦

(1988年3月29日受付)

I.内容要旨
開心術中の心筋保護液の灌流状態を良好に保つために,保護液の電解質組成および温度は如何にあるべきか,に関して実験を行った.イヌの冠動脈(前下行枝)を摘出し,その切片の発生張力を,灌流液の電解質組成および温度を種々に変化させて測定し,以下の結果を得た.
1.K濃度20mEq/lの灌流液中のCa濃度を増加させると,37℃では濃度が0.2mEq/l以上になると冠動脈張力が発生し,その強さはCa濃度に相関した.このCaによる収縮は,20℃以下の低温,または灌流液にMgを30mEq/l添加することにより抑制された.
2.高K灌流液中のNa濃度が90mEq/l以下に減少すると,37℃では冠動脈は発生張力を生じ,その強さはNa濃度が低いほど大きくなった.この低Naによる収縮は,25℃以下の低温,または20mEq/lのMgの添加により抑制された.
以上の結果から,20℃以下に冷却すると冠動脈の収縮は強く抑制され,冠動脈収縮を起こさない効果を持つ心筋保護液としては,20mEq/lのKを含有する場合には,低Ca,高Na,高Mgの電解質組成が望ましいと考えられた.

キーワード
心筋保護液, 電解質, 低温, 冠動脈収縮, 発生張力


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