[
書誌情報]
[
全文PDF] (2388KB)
[会員限定・要二段階認証]
日外会誌. 90(2): 250-257, 1989
原著
網内系賦活によるラット部分肝切除後の肝再生増強効果
I.内容要旨部分肝切除前に網内系(RES)を賦活し,肝切後の肝再生に及ぼす効果を検討した.溶連菌菌体(OK-432,5K.E./匹)をラット腹腔内に投与すると,24時間後にカーボンインクによる貧食指数(K値)は,0.061±0.005min
-1と対照の0.036±0.004min
-1に比し約2倍で有意(p<0.05)に上昇し,RESが活性化された.その後70%部分肝切除(PH)を行ない,肝内cyclic AMP(cAMP)量の変化,K値の変動及び肝細胞のDNA合成能に及ぼす効果を検討した.
RES賦活により70%PH 14時間後,肝DNA合成開始に先立ち肝内cAMP量は2.8±0.23pmol/mg tissueと対照の1.96±0.05pmol/mg tissueに比し約1.5倍で有意(p<0.01)に増加した.またRES賦活により70%PH前にすでにK値は0.06±0.005min
-1と対照群の約2倍に上昇しており,70%PH 12時間後に0.028±0.006min
-1と前値の50%に低下したが,その値はほぼ正常ラットの70%PH前の値を維持し,肝切120時間後までK値は対照群に比して有意(p<0.05)に保たれていた.さらに70%PH 18時間後の肝細胞DNA合成能は98,100±38,580dpm/mg DNAと対照の11,840±9,430dpm/mg DNAに比し約8倍に,24時間後のDNA合成能は,168,300±10,500dpm/mg DNAと対照の124,100±87,700dpm/mg DNAに比し1.5倍に増強されており,70%PH 24時間後の肝DNA合成のピーク値は70%PH前のK値とY=14,630.5X+828.4,r=0.96,p<0.01と良く相関した.
以上の結果,RES賦活により肝内cAMPの誘導が生じ,その結果肝再生が増強されるものと推察された.肝切前のRES賦活は肝切後の肝再生を促進し,その後の肝不全発症予防として有用な方法となると考えられた.
キーワード
網内系賦活, 部分肝切除, 肝再生, cyclic nucleotide, OK-432
PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。