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日外会誌. 90(2): 243-249, 1989


原著

イヌ同所性肝移植前後の肝循環動態について
ー特にトランジットタイム血流計による門脈,下大静脈血流量および H2ガスクリアランス法による肝組織血流量の検討ー

大阪市立大学 医学部第1外科

西脇 英樹 , 大平 雅一 , 朴 利敦 , 石川 哲郎 , 中河 宏治 , 矢田 克嗣 , 梅山 馨

(1987年12月21日受付)

I.内容要旨
同所性肝移植前後の肝循環動態の変動を検索するため,雑種成犬を用い,実験的に同所性イヌ肝移植術を施行し,移植前後の門脈,肝動脈,肝下部下大静脈血流量をトラソジットタイム血流計で,肝組織血流量は水素ガスクリアランス法を用いて測定した.40頭の移植前平均門脈血流量は234±95ml/minを示した.肝動脈血流量118±76ml/min,肝下部下大静脈血流量291±103ml/minを示した.門脈:肝動脈血流量比は2.9±2.2であった.また,肝組織血流量63±24ml/min/100gの値を示した.肝移植後の平均門脈血流量は189±86ml/min,肝動脈血流量77±51ml/min,肝下部下大静脈血流量179±111ml/min,肝組織血流量57+25ml/min/100gを示し,移植前に比べ門脈血流量24%,肝動脈血流量37%,肝下部下大静脈血流量4.5%の減少を認めた.また,移植前後の門脈/肝動脈血流量比は2.9+2.2から3.6±0.5へと上昇し,肝動脈血流量の低下は門脈血流量の低下に比べ大きく,水素ガスclearance法による肝組織血流量でも12%と軽度低下傾向を示した.
以上,肝移植後には肝授動操作,血管吻合,血圧低下などによる肝動脈,門脈血流量の低下による肝微小循環の軽度低下が示唆された.

キーワード
イヌ同所性肝移植, 肝血管血流量, 肝組織血流量, トランジットタイム血流計, 水素ガスクリアランス法


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